成年後見人(保佐人・補助人)申立て手続
成年後見制度のうち、法定後見には3つの類型があります。
すなわち『後見』『保佐』『補助』の3類型です。
『保佐』:制度利用の対象となる方=『被保佐人』の判断能力が著しく不十分。
『補助』:制度利用の対象となる方=『被補助人』の判断能力が不十分。
といった分類の仕方になります。
このうち、世の中で最も多く利用されているのは『後見』ですので、後見に絞って説明をさせていただきます。
当事務所に寄せられる成年後見人申立のご相談に関しては以下のようなケースが多いです。
- 処分したい不動産があるが名義人が認知症である
- 遺産分割協議をしたいのだが、相続人の中に意思表示を出来ない人物がいる
- 家族が突然事故に遭い、意識不明になってしまったが、預貯金をおろせず困っている
後見人申立ての必要書類等
- 後見開始申立書
- 医師の診断書
- (場合によっては)本人情報シート
- 制度を利用する方の戸籍謄本
- 制度を利用する方の住民票
- 制度を利用する方の登記されていないことの証明書
- 制度を利用する方の身分証明書の写し
- 財産目録
- 年間収支予定表
- 不動産を所有している場合には登記簿謄本
- 預貯金の通帳の写し
- 親族関係図
- 推定相続人の同意書
- 後見人を指定したい場合には、後見人等候補者事情説明書
- 後見人候補者の住民票
- (場合によっては)上申書
- 印紙、郵便切手
家庭裁判所に成年後見人の申立てを行えばすぐに選任するというわけではありません。場合によっては家庭裁判所による成年後見開始の審判が1週間程度でなされることもありますが、極めて例外的であって、通常は数か月の期間を要します。これは、成年後見申立ての後に裁判所による、本人や申立人との面談等の調査があるためです。
成年後見開始の審判がなされると、成年後見人候補者のもとに審判所が届きます。これが届いた日から2週間を経過した日が成年後見人確定の日付になります。こうして成年後見人に就任すると、まずは家庭裁判所への就任報告を行う必要があります。また、1年に一度被後見人の財産について家庭裁判所への報告を行わなければなりません。
成年後見人には報酬を請求する権利が発生します。この報酬は被後見人の財産額などにより家庭裁判所が決定して、被後見人の財産の中から支出されます。親族が成年後見人に就任するケースでは報酬を請求するもしないも自由ですが、弁護士や社会福祉士、司法書士などの第三者が成年後見人に就任した場合は基本的に報酬は発生すると考えてください。
後見人の申立てを行う際の注意点
上記に記載のとおり、第三者が成年後見人に就任した場合、被後見人が死亡するまで成年後見人に報酬を支払い続けなくてはなりません。「そんなの納得出来ない!」と思って、自分や周囲の家族を後見人候補者として申立てを行う場合がありますが、この際にも注意が必要です。一部の親族の方の同意を得ることが出来ないまま申立てを行ったり、財産が多額であったりすると、家庭裁判所の判断により、自動的に第三者が選任されてしまう場合があります。第三者が選任されたことに対しての異議は一切認められません。その他、成年後見人申立てを行う際には将来的なことも考えて、慎重に行う必要があります。